ウミガメのスープで質問に完全にランダムに答えたらどうなるか
こんばんは、週末です。
突然ですが、ウミガメのスープってご存知でしょうか?
ウミガメのスープとは、出題者と回答者に分かれて行われるクイズです。ただし、答えは問題文の情報だけでは解けない複雑なものとなっていて、それを絞り込むために、回答者は出題者に質問をすることができます。ただし質問はYESかNOで答えられるもののみ。
曖昧な問題文から、回答者は質問を繰り返し投げかけ、出題者から情報を引き出します。そして、少しずつ問題文の全体像を明らかにしていく、というものです。
僕はちょくちょく暇つぶし程度にこれを遊ぶのですが、あるとき思いました。
ウミガメのスープは、問題文の情報だけだと無限通りに存在する解答の中から、質問によって解答を絞り込み、ただ一つの真実を見つけるゲームだ。つまり、質問にYESと答えようとNOと答えようと、いつかそれっぽい答えが見つかるのではないか!?
つまりは、質問の答えを全部ランダムで決定してもいけるんではないか!?
というわけで、実験してみることにしました。
【実験】ウミガメのスープで、質問にすべてランダムで答えたらどうなるのか?
さっそくプレイ開始
LINEグループの一つで、ウミガメのスープをしようと声をかけてみます。
想像以上にノリノリだった。全員経験はあります。
予定通り僕が出題者となり、ほかのプレイヤーは回答者となり質問を僕にしてくることにします。
さっそく出題。
問題 男は、いつも自転車を利用して通勤する。しかし、その日はいつも以上に健康だったので、バスを利用した。いったいどういうことだろうか?
普通は問題を出している出題者が解答を考えているものです。ですが今回は解答を考えていません。神のみぞ知るです。ちなみに問題は30秒で作りました。
合宿が終わったらしい人も参戦。
回答者たちは、さっそく質問を繰り出してきました。
Q.男は車酔いをする?
Q.自転車に乗るには不健康である必要がある?
普通は出題者が解答と照らし合わせて「YES」なり「NO」なり答えるのですが、今回はどう答えるかは完全ランダムで決めます。
Excelさんの登場です。まず質問文を入力し…
「YES」「NO」「関係ない」の3つをランダムに出力するように関数を組みます。
ウミガメのスープで行う質問は「YES/NO」で答えられる質問ですが、質問が問題文にあまり重要ではない場合、ミスリードを回避する目的で、「関係ない」と出題者が答える時があります。
そのため、ランダム出力の選択肢には「関係ない」を含めました。まあいつ「関係ない」と答えるか決められないんですけどね。
出ました。男が車酔いするかどうかは関係ないようです。
Excelが出した答えを回答者に伝えました。この調子で進めていきましょう。
もちろん回答者は出題者が適当に答えを決めていることなど知りません。回答者は皆気心の知れた友人なので、きっと許してくれる(震え声)。
Q.男は車酔いする →関係ない
Q.自転車に乗るには不健康である必要がある →関係ない
Q.男は通勤するためにバスを利用した →関係ない
ちょっと関係なさすぎやしませんか。男がバスを利用したのは、通勤のためとは言い切れないようですね。
そういえばこれ、回答が内容的に、ほかの質問と矛盾する可能性がありますね。そうなったらどうしましょう…?
さっそく怪しいポイントが
少し進みました。ここポイントです。「Q.そのバスは病院の近くを寄らない?」という質問。これは「男は、本当はバスに乗って出勤した方が効率がいいが、病院に寄らないといけないため仕方なく自転車で通勤している。その日は健康で病院に寄らなくてよかったので、バスを使った」という推測を立てているのでしょう。
これに対して「YES」と答えてしまいました。回答者が指摘すればもうこれが解答でよかったかもしれません。
しかし、さらに注目がその次。「Q.男は通勤時に寄り道をしていた?」に「NO」と答えました。このせいで「男は出勤時病院に寄っていた」という推測がつぶれます。
しかしさっきの質問に「関係ない」と答えてない以上、バスが病院の近くに寄らないことが何か重要な情報であることは確定している。微妙に矛盾しています。
ここで一番重要なのは、どれだけ核心を突いたような質問をしても、この問題に核心なんて存在しないということです。泣けます。
男が心配
男は特殊な病気にかかっていることが判明しました。聞いてないぞそんなの。
関係ありませんが、さっきドイツ村で検索をかけてみたら、矛盾の権化でした。一体東京なのか千葉なのか、はたまたドイツなのか。
一体何病だ
男の持病はバスにのると発症するようです。
ここまで進みました。進むといってもゴールはないのですが。
全体の56%を「関係ない」が占めています。乱数が正常に作動してるのか心配になってきました。
健全なる精神は健全なる肉体に宿る
Q.病気は精神的なもの? →関係ない
Q.病気は肉体的なもの? →NO
じゃあ何なんだよ。
ここにきて
Q.『バスを利用した』とはバスに乗ったということ? →NO
男はバスに乗っていなかったという衝撃の事実が判明しました。どうやらこの問題は、「バスを利用した」を「バスに乗った」と誤解させる、巧みなミスリードが設置されていたようです。これは高度な戦いになる予感。
このミスリードに気づいた友人も友人ですごいな。
回答者側もかなり考えあぐねているようです。ここら辺から僕は、答えのない問題を解かせている罪悪感が心に渦巻いています。
進まない
進みません。ここで僕は、あることに気づきます。
このゲーム、終わらせられないかもしれない。
ウミガメのスープの終了条件は問題によってまちまちですが、基本的に「解答の重要な部分が質問によって判明した」時に終了とします。
ですが、今出題しているこの問題、解答の重要な部分がわかりません。というか、解答がわかりません。
従って、僕がこの問題を終わらせるためには、誰かが「解答の重要な部分を突いてるっぽい質問」をし、無理やりそれを解答にでっち上げ「YES、大正解!!」と答える必要があります。
しかし、質問が積み重なれば積み重なるほど解答の幅は狭まり、回答者が「重要な部分」を見つけることが困難になっていくのです。
つまりこのゲーム、あがけばあがくほどドツボにはまって終われなくなる無間地獄、ということです。
なんて恐ろしいゲーム……!!
みんなごめん。
疑いの目
恐れていた通り、質問が積み重なってきました。今までの情報をまとめると、男は「薬物乱用した結果、精神的でも肉体的でもない病気にかかり、バスにのるとそれが発症するのでバスに乗らずにバスを使った」ようです。
どんだけテクニカルな生き方してんだ。
質問はとめどなく来ます。
Q.通勤する場所は『いつも』と『その日』は同じだった? →関係ない
Q.男の病気は慢性的なもの? →YES
Q.健康というのは、いつもより男の病気の症状がましだっただけだったということ? →NO
何とか矛盾なく切り抜けていきます。
と、ここで一人の回答者が、
Q.薬物による慢性的な病気ですか?(確認)
と送信してきました。
……まさか、疑われている?
なんと、すでにわかっていることを繰り返し聞いてきました。
まさかこいつ、僕が適当に答えていることに感づいているのでは? 無駄に心臓が高鳴りました。
先ほどまでの情報からして、僕は「YES」と答えなければ不自然です。
NOでした。
これはもう逃れようのない矛盾を引き起こしてしまった。
Q.男の病気は薬物によるもの? →YES
Q.男の病気は慢性的なもの? →YES
なのに
Q.男は薬物による慢性的な病気か? →NO
終わりの瞬間
取り返しようのない矛盾ができたのにも関わらず、ゲームは続いています。なぜか誰もその矛盾部分に触れません。
これ、逆にこっちが弄ばれているんじゃないか? 今の僕はさながらコアが露出したまま放置されているボスです。
…と疑心暗鬼に陥っていました。こんな実験しておいてなんですが、早くやめたいです。誰か助けてください。
すると、こんな質問が流れてきました。
Q.何かしらの原因で起きるのが遅く、子供を幼稚園などに届けるため、自転車を用いるが、その日は調子がよく早めに起きたため子供を幼稚園の送迎バスに任せて通勤した?
来た! 核心を突いてるっぽい質問!!
薬物のくだりを無視していますが、バスに乗らずにバスを利用したことをうまく説明しているし、問題文にちゃんと沿っています!
薬物は解答のエッセンス的なものであって、たいして重要じゃなかったことにしちゃえばいいよ!
これを解答にしよう! あとは僕が「YES」と答えれば問題終了だ!
ついに解放される時が来たと思ったその時、
自己完結しないで。
いい案だと僕も思っていましたが、「Q.男は通勤時に寄り道していた? →NO」に矛盾します。過去の質問がここにきて猛威を振るいました。
こんなことってありますか?
がまんできない!
この闇のゲームから早く逃れたい気持ちが最高潮に達した僕は、「寄り道の質問はYESだったのに、間違ってNOって答えちゃったごめーん^^」ですませればいいやと判断しました。
Q.何かしらの原因で起きるのが遅く、子供を幼稚園などに届けるため、自転車を用いるが、その日は調子がよく早めに起きたため子供を幼稚園の送迎バスに任せて通勤した?
これに「YES」と答えられればゲーム終了です。すべてはExcel次第、確率は1/3…。
質問を入力します。そして…
関係ありませんでした。
実験終了
この回答を最後に、誰一人として質問をしなくなりました。おそらく何も思いつかなくなったのだと思います。
自然消滅した会話をどうしていいかわからずに、今に至ります。
そんなこんなで、地獄の実験は幕を下ろしました。
【実験】ウミガメのスープで、質問にすべてランダムで答えたらどうなるのか?
【結果】会話が自然消滅し、気まずくなる
週末でした。